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専門家が回答! 看護師の副業で絶対におさえておきたいコト

副業が気になっているけれど、「法律で副業が禁止されているのでは?」「会社にバレたら懲戒処分になるかも……」など、不安が先立ち最初の一歩を踏み出せない看護師の方もいらっしゃるでしょう。

この記事では法律のルールから副業選びのポイントまで、副業を始める前に知っておきたいポイントを、行政書士でもあり看護師として長年勤務経験のある阿毛裕理さんのアドバイスとともに解説していきます。

 

[監修者プロフィール]

阿毛裕理(あもう・ゆり)氏/2007年、宮城大学看護学部卒業。看護師・保健師資格取得後、仙台厚生病院心臓血管センター循環器内科へ入職し、一般病棟およびHCUで勤務。2013年、行政書士資格取得。2014年開業し、AAマネジメント株式会社およびAAstella行政書士法人、株式会社SUNNY SQUAREを設立。主に看護管理者向けの研修講師を務める機会も多い。

副業は自身の働き方や生き方の選択肢を広げる

世間一般では「副業」と聞くと、本業以外の収入を確保する目的をイメージする人も多いでしょう。しかし阿毛さんによると、看護業界では現在、必ずしも収入アップを目的とせずに副業を始める人が増えているようです。

「社会的に働き方の多様化が広まっているが、看護業界では一箇所に長く勤務するという昔ながらの勤務形態がまだまだ根強いのが実状です。そんな看護師のなかには看護学校卒業後に数年を経て、もともと看護師として志していた実務と現実のギャップに悩んだり、勤務に疲れてバーンアウト(燃え尽き症候群)してしまったりするケースも珍しくありません」(阿毛さん)

そこで勤務場所や時間に縛られない働き方を目指して、副業を検討する人が多いそうです。

「厚生労働省のデータによると、看護師の資格を保有していながら看護職に就かないともいわれています。ですが、潜在看護師の方々も、決して仕事をしていないというわけではありません。私が運営している人材紹介会社を通じた実感として、看護師はもともとバイタリティがあり、好奇心が強く、行動力の高い方が多い。ですので、看護業界ではなく、飲食店で接客業務を覚えたり、マリンスポーツのレジャー施設で働いたりと、副業や転職先では興味のある分野や趣味を生かした仕事を選ぶ方も珍しくありません。もちろんスキルや経験を生かして稼ぐことも可能ですが、収入アップのために副業を実践している方はむしろ少数派であり、自身の働き方や生き方の選択肢を広げるアクションのひとつとして副業をされている方が多いのが私の肌感です。」(阿毛さん)

では、看護師が副業を検討する際にどのような点に気をつけておかなければいけないのでしょうか。法的な観点を踏まえて、ひとつずつおさえていきましょう。

 

そもそも看護師は副業OKなの?

民間の医療機関なら基本問題なし

副業の可否は勤務先によって変わります。

まず、民間の病院やクリニックに勤務する看護師が副業をすることに、労働基準法で制約はありません。ただ、就業規則で副業や兼業について規定しているケースがあります。実際の運用では、「本業に影響がない範囲なら」という条件付きで承認する医療機関が多いようです。

就業規則をまずは確認してほしいところですが、従業員が10人未満の事業場では、労働基準法では作成義務が課されていません。就業規則がない場合は、所属上長や運営者に直接尋ねてみるのがベターです。

一方で、国公立の病院や地方自治体の保健所などに勤めている看護師は公務員として扱われます。そのため、原則副業を行うことができません(国家公務員法第103条「私企業からの隔離」、第104条「他の事業又は事務の関与制限」、地方公務員法第38条「営利企業への従事等の制限」)。

阿毛さんからのアドバイス

副業そのものが問題になるというより、「無断で」行う点がトラブルの原因になりやすいようです。できれば本業の勤務先に事前に相談しておくのが安心です。

 

会社に相談というけれど、どうやるの?


トラブルにならないためにも、副業はなるべく会社の承認を得ておくのがベター。しかし、どのように相談や報告をすればいいのか分からない人も多いでしょう。具体的には以下のポイントに気をつけておきましょう。

 

1.まずは身近な上司に相談する

「離職の意思を疑われるのでは?」「査定に響いたらどうしよう……」などといった不安から、経営者や代表に直接相談しづらいこともあるでしょう。そのためまずは直属の上司や身近な管理職者に相談してみましょう。そこで協力が得られそうなら、その上司経由で可否をそれとなく経営者に確認してもらうのもいいでしょう。

 

2.勤務時間に影響がないことを前提に話す

組織にとって従業員の副業で気になるのは、実務のパフォーマンスへの影響です。副業を相談するには「勤務時間に影響がない範囲で、スキルや経験を積むことを検討している」と、本業が軸であることを示して相談することを意識してみましょう。

 

3.同僚にも尋ねてみる

看護業界では副業をしている人は以前と比べて増えています。同僚に副業について尋ねてみて、実践している人がいればどのように承認を得たか確認してみましょう。

 

それでも会社に隠したいときは?

前述のとおり、会社とトラブルを起こさないためにはきちんと話を通しておくのがベターです。それでもやむを得ぬ事情があって会社に隠して副業を始めたいときは、下記の点を留意しておきましょう。

 

副業分の住民税は普通徴収を選ぶ

副業の収入が固定された時間拘束ではなく、かつ給与としての報酬ではなく謝金として受け取ることができれば、その収入は雑所得として取り扱うことができます。副業の雑所得は、納税者本人が納税通知書を持参して普通徴収で別途納税できるので、会社にバレるのを防ぐことができます。

阿毛さんからのアドバイス

ただし、現在多くの自治体は特別徴収の一本化を推進しており、普通徴収が認められない可能性がある点は注意しておきましょう。

 

また、会社に副業がバレる主な理由としては、下記の2点が挙げられます。

 

1.住民税の金額

勤務先で副業がバレる一番の原因は、住民税額が高くなることです。勤務先の経理担当者は住民税額を把握できるため、賃金水準が同じなのに明らかに1人だけ住民税額が高いと、恐らく給与とは別に収入があることに気づくでしょう。

 

2.普通徴収への切り替え依頼

そこで「住民税の納付方法を『普通徴収』にしておく」ことで会社に副業を隠すという方法もあります。しかし、そもそも「普通徴収に切り替え」をお願いする時点で、副業や副収入があることを勘づかれる可能性もあると考えておきましょう。

 

阿毛さんからのアドバイス

マイナンバーで給与所得が管理されているため、住民税が変わると会社の経理担当者には把握されると思っておきましょう。

 

副業を始める前に絶対に知っておきたいコト


年間収入が20
万円以上なら確定申告が必要

本業のほかに年間20万円を超える収入があったら、確定申告が必要です。確定申告をしなかった場合、本来納めるべき所得税に加えて、「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティが科せられることもあります。

 

年末調整は一箇所のみ

年末調整は1社からしか受けられません。そのため、副業によって複数の勤務先から収入がある場合は、給与額の多い本業の勤務先で年末調整を行います。本業と同様、副業の収入については勤務先から源泉徴収票がもらえるので、本業のぶんとあわせて確定申告をし、納税額を計算します。

 

社会保険加入が2カ所になることもある

決して多くはないケースですが、社会保険は、本業・副業ともに週30時間以上勤務となる場合は、2カ所で加入することになります。そうなると、社会保険料の負担が大きくなってしまう場合もあります。

 

肉体的・心理的な負荷がかかる

当たり前ですが、本業とは別に労働時間が増えると、それだけ肉体的な負担は増えます。体調を崩して本業の業務や収入に影響を及ぶと元も子もありません。

 

阿毛さんからのアドバイス

面倒だからと確定申告を怠っていると、「脱税」になってしまうこともあるので注意を。また、予期せず社会保険料の負担が大きくならないように、副業の労働時間も週30時間を超えないか自分自身で管理しておきましょう。

看護師が副業を選ぶ際のポイント


厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定)によると、副業は「労働者が主体的にキャリアを形成することができる」として、より生産性の高い内容が期待されています。

副業といえば収入アップのためという目的がイメージされがちですが、看護師が副業を選ぶ際のポイントとしては、収入アップ以外が重視されることもあります。いくつか観点を整理しておきましょう。

 

1. 収入アップのためなら資格やスキルを生かした仕事を選ぶ

付加価値の高い業務はそのぶん時間あたりの収入もアップします。看護師・准看護師の資格や経験を生かした副業を選べば、効率的に収入アップにつながるでしょう。

・検診ナース

時給1500円〜2000円程度

企業や学校などで行われる健診センターのサポート業務を行います。

 

・夜勤専従

2万円〜3万5000円程度/1回

深夜手当などで日勤よりも収入が大きいのが特徴。ダブルワークに人気。

 

・イベントナース

1万円程度/1日

色々なイベントの救護室や医務室、託児所などで救護を担当します。

 

・ツアーナース

1万2000円〜1万5000円程度/1日

修学旅行や遠足、旅行会社のツアーなどに帯同し、体調管理や応急処置を担います。

 

・オンコール勤務

1日あたり5000円〜2

緊急時に病院や介護施設などに駆けつけられるように、自宅などで待機する勤務形態です。

 

・デイサービス

時給1500〜2000円

老人ホームなどで主に各種介助や問診、健康チェックを行います。

 

・医療ライター

1万〜3万円程度/1本

 

2. やりがいを重視するなら一貫性のある分野を選択

たとえば本業では循環器の分野で働いている人が、副業で美容医療の現場で働いてみたところ環境の違いにとまどってしまうこともあります。もともとどういうフィールドの業務を望んでいたか、業務のやりがいを感じられないと副業が苦痛になってしまうケースもあります。

 

3. リフレッシュのためならキャリアに縛られずに検討

看護師のなかには、緊張感のある業務や職場の人間関係に疲れて、副業では収入アップではなくリフレッシュを目的に働きたいという方も意外と多くいます。看護職のスキルを生かすとしても、直接感謝の言葉を受け取る機会がないので介護施設で働いたり、人生経験の広げるために飲食業などで接客経験を積んだりするなど、副業だからこそ広がっている選択肢に目を向けるのもいいかもしれません。

 

阿毛さんからのアドバイス

看護師はスキルを生かした副業を選べるのがひとつの強み。ただ、収入アップだけが副業のメリットではありません。自分の能力を一つの会社にとらわれず発揮したり、まったく経験のない業種の仕事に接したりできるのは、人生を豊かにするために非常に有意義な選択肢といえます。

 

看護師の副業の探し方


看護師の副業は主に下記のような探し方があります。

 

1.医療系求人サイト

医療系の業務に絞った転職・求人サイトなら効率的に資格や経験を生かした業務が見つかります。

・マイナビ看護師

・ジョブメドレー

・MC-ナースネット

など

 

2.一般的な短期求人サイト

イベントナースやデイサービスなど、スポット勤務の案件は一般的なパート・アルバイトの求人サイトでも募集しています。

・indeed

・タウンワーク

など

 

3.マッチングサービス

スポット勤務を多く取り扱う医療従事者向けの採用マッチングアプリなら、エリアや時間の選択肢をさらに増やすこともできます。

・Ucare(ユーケア)

・N/thestory(ジストリー)

・ゆたな~す

など

 

4.クラウドソーシング

医療系記事の執筆や監修については、単発で業務を依頼・受注できるクラウドソーシングで、看護師・准看護師を対象に多く案件が募集されています。

・クラウドワークス

・ココナラ

など

 

まとめ

この記事では、看護師が副業を始めるにあたって気になる代表的な悩みや疑問について解説してきました。ぜひ皆さんも本業にとらわれない働き方を検討してみてはいかがでしょうか。